《草野精也の野望》

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《草野精也の野望》

 (くさ)()(せい)()は何もかも知っていた。  宏美が早くに結婚していたことも、大揉めに揉めて別れたことも。  精也の悪友に、西村(にしむら)という男がいる。そいつが宏美の元夫だ。あの男は金に汚いパチンコ狂で、今までいくら貸してやったか分からないし、その金が返ってきたこともない。普通であれば(えん)を切るしかない腐った野郎なのだが、そうはできない理由が精也にはある。  西村に金を貸すたび、女を一人紹介してもらえる。彼女たちは典型的な娼婦タイプで、年齢も二回り近く離れている年上だった。しかし、容姿や年齢よりも、()()()ということが重要なのだ。同世代や年下は相手にしてくれない。自分で言うのも何だが、若い女子に好まれる要素は何も持ち合わせていなかった。  名前に「精」の字がついているからだろうか。精也はとにかく性欲が強く、女という女は服なんぞ着ずに、裸で歩いてくれたらいいと思っている。過去それについて真剣に考えたことがあり、慣れてしまって欲情しないのではないかと危惧したが、いいや自分の性欲はそんなもので失せる低質なものではないと結論づけ、人生の目標を千人斬りと定めた。多くの女を抱くために未婚を貫く。離婚や慰謝料なんてまっぴら御免だ。
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