初めてってほんと?

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初めてってほんと?

僕はぼんやりとキヨくんを見上げた。今なんて言ったんだろう。キヨくんも初めてキスしたって言ったんだろうか。僕は信じられなくて目を見開いた。 「嘘。だってキヨくんいつもモテてた。」 キヨくんは後ろを振り返りながら三浦君が周囲と話しながらこちらに近づいてくるのを見ると、僕の唇を指で摘んで言った。 「嘘言ってどうするの。」 「お待たせー。橘大丈夫だった?お!その様子じゃ復活したみたいだな?さっき顔は真っ赤だし、涙ぐんでるし、やばいかなって思ったけど。おいおい、思い出すなって。あんなのおふざけなんだし。しかも委員長はいい男だぞ?ははは。」 三浦君は一人で自己完結して、賑やかに周囲の生徒たちと話し始めた。僕は三浦君の賑やかさに気を呑まれて、さっきの事は考えない様にしようと思った。 結局僕たち3-Fの、執事メイド喫茶の女装コスプレが見事優勝して、それはもうほとんど三浦君のアピール力に他ならないと思った。でも賞金の金一封を受け取って目をギラつかせた三浦君が、舞台上で言い放った言葉に嫌な予感がした。 「私たち~ぃ、あと2時間たっぷり営業しますので、是非来てくださいね?もちろん昨日好評だった私とのポッキーゲームイベントと、この可愛子ちゃんにチョコバナナ食べさせる事が出来る限定イベントは14時から開始します!よろしくお願いしま~す♡」 教室に急ぎながら、三浦君に委員長が文句を言っていた。 「三浦、イベントやるとか聞いてないけど。」 早足の二人に慌てて後をついていく僕を振り返って、三浦君がにっこり笑って言った。 「橘、今日は昼メシ食ってないから三本いけるだろ?コンテスト優勝したから、今日は一本2000円でいけるな。俺もどれだけポッキー行けるかなぁ。」 すっかり金の亡者となった三浦君を止める術は僕らには無かった。それに壇上で告知したのにやらないとは言えないだろうし。僕は顰めっ面のキヨくんの袖を引っ張ると、引き攣った笑みを浮かべて言った。 「三浦君がチョコバナナ四本って言わないだけ、温情があったと思うんだ。小さめの用意してもらうから、大丈夫。」 そう言う僕に、キヨくんはため息をつくとヒールじゃ歩きにくいだろうと、僕の手を繋いで歩き出した。そんな僕たちを見た三浦君が橘にばっかり優しくして狡いって駄々をこねるから、キヨくんは両手でメイド二人を引きずる様に歩き出した。 その姿は写真部に撮られて、文化祭中、直ぐに売りに出されたらしかった。『ドS執事、二人の男の娘をお仕置き』そんな題名で売り出された写真は女性客に凄く売れたみたい。僕には理由がわからないけど…。
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