僕がメイド!?

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僕がメイド!?

それから直ぐに文化祭当日はやって来た。僕は更衣室専用になっている空き教室で、呆然と目の前の白と黒のメイド服を見つめていた。隣の三浦君はテキパキと慣れた様子で着替えている。 「橘、早く着替えないと時間ないぞ。しかし田中が骨折して急遽メイド役になるとか、お前大丈夫か?お前がメイドにぴったりだって箕輪に言われるまで気づかないとか俺たちマジでどうかしてたよ。田中よりも全然向いてるって。ほら、着方教えてやるから急げ。」 僕は急かされて三浦君の着方を参考に、見よう見まねでメイド服を着た。田中君と僕は背格好が似ていたから、箕輪君のひと言で僕が急遽抜擢されたけど、こんな事になるなんて僕の心の準備は一晩じゃ用意出来ない。 三浦君は僕の着こなしを手直ししつつ、少し驚いた顔で言った。 「…お前、剃ってるのか?全然毛がない…。マジで女子みたいだな。メイド役は事前に足の毛剃りしてくるお約束だけど、昨日言うの忘れたからどうかと思ったんだけど、良かったよ。さ、次メイクしてもらって。」 僕は三浦君に肩を押されてパーティションで仕切られたメイクコーナーへ並んだ。この高校はいちいち本気を出すみたいで、文化祭の間、プロのメイクさんを雇っている。更衣室のメイクコーナーには3人のメイクさんが準備万端待ち構えていた。 一人のメイクさんが手を挙げて僕を呼んだ。 「はーい♡次の人どうぞぉ。あら、やり甲斐ありそうな子じゃない~。腕が鳴るわぁ。」 いかにもおネエっぽいメイクさんが座った僕を覗き込んだ。 「お肌すべすべ!何年生?え、高3でこれなの?うわ、羨ましい!じゃあ目を閉じてね~。」 それから賑やかなメイクさんのノリノリのメイクで、僕はあっという間に仕上がった。 「貴方って派手な顔じゃないけど、ひとつひとつのパーツが綺麗なのね。整形メイクじゃなくても十分女子になっちゃったわ。流石に髪は短いから、このストレートロングのかつらで完璧ね!うん、貴方にぴったりよ?これ明日も使うからこの袋に入れて保管してね?」 圧倒された僕が、椅子から立ち上がってお礼を言って教室を出て行こうとしたら、周囲の女装軍団がザワザワと何か騒いでいた。何だろう。三浦君かな。僕は用意が出来たら直ぐに教室へ行くようにと言われていたのを思い出して、急いで教室に向かった。 3-Fの教室は更衣室とは棟が違って結構離れていたので、自分のメイド姿が恥ずかしかった事もあって、僕は小走りで少し俯いて歩いた。すれ違う沢山の生徒たちはそれぞれにコスプレしていたので、そこまで違和感は無かったはずだけど、すれ違う生徒たちが妙に見てくる気がして落ち着かなかった。 ようやく教室にたどり着くと、僕はキョロキョロしながら他のメイドたちを探した。三浦君は見当たらない。やっぱり僕の方が早かったんだろうか。クラスメイトが僕をじっと見つめてくるのが居た堪れない。…おかしいのかな、やっぱり。 すると僕の前に執事服がよく似合っているキヨくんが立ち塞がった。 「…お前、玲、いや、橘か?」
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