宣伝活動

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宣伝活動

「いらっしゃいませ、ご主人様?」 僕が一生言う事なんてないと思っていたセリフを、一体今日何度言っただろう。僕のクラスの執事メイド喫茶は、希望により300円で写真撮影も出来る。僕はなぜか三浦君に負けず劣らず女子高校生からも、それこそ男子高校生からも写真撮影を希望された。 同じ学校の男子からは、ふざけて抱きしめられながら写真を撮るなんて事もあって、流石にしんどかった。あんまり度が過ぎると委員長や三浦君が注意して、助けてくれた。 すっかり交代の時間もずれ込んで遅くなった昼休憩、僕は椅子に座ってぐったりとしていた。丁度そこにキヨくんがやって来て言った。 「今から宣伝がてら昼メシ食べに行くから、橘も行けるか?」 僕は周囲をキョロキョロしたけれど、宣伝に行くべき三浦君はまだフロアに出ていたし、休憩組の他のメイド達はもう皆出払ってしまっていた。僕は自分が宣伝になるのかなと戸惑いながら、有無を言わせないキヨくんと一緒に廊下に出た。 キヨくんは僕をじっと見て言った。 「宣伝だから手を繋いだ方がいいかもしれない。ほら。」 そう言うと、クラスののぼりを左手に、もう一方の手を僕に差し出した。僕はおずおずとキヨくんの手を握ると、一緒に歩き出した。キヨくんの手は僕より大きくてがっちりしていて、覚えのある子供の頃の柔らかな手とはまるで違っていた。僕はこんなところまで体格差が出るのかとまた少し凹んだ。 「…玲、何食べたい?」 いつもと違うトーンでキヨくんが僕に話しかけて来た。何だか小学校時代のキヨくんが目の前にいる様な気がして、僕は少しボウッとしてしまった。するとそんな僕を見てキヨくんは優しく笑うと、何も言わずにたこ焼き屋の列に並んだ。 僕たちは側に居た在校生や外部の来客に囲まれて、何枚も写真を撮られてしまった。僕と二人で写真を撮ろうとした在校生には、キヨくんがお店に来て撮ってくださいと釘を刺していたのが、やり手の店長みたいで少し面白かった。 僕がクスクス笑っていると、写真を撮ろうとした下級生たちが絶対行きますと言ってくれて、僕は嬉しくなってにっこり笑って言った。 「ありがとう。絶対に来てくださいね?待ってますから。」 それからキヨくんは何だか機嫌が悪くなってしまって、僕はそんなキヨくんにどうして良いか分からなくなってしまった。それでも手を離そうとしないキヨくんは、たこ焼きを二つ受け取ると僕にそれを差し出した。 「橘、これ急いで食べないと。時間無いぞ。」 そこには僕の幼馴染のキヨくんじゃなくて、いつもの委員長が居た。僕はなぜか胸がチクっと痛い気がした。さっき真田に掴まれたせいかもしれない。
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