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大学選択
「橘は受験どうする?橘は評定良さそうだから、推薦も狙えるんじゃない?」
箕輪君にそう聞かれて、僕は目の前の志望校のアンケートを見つめた。当日受験や、一般推薦はともかく、今日募集開始された、指定校推薦の締切は10日後だ。ここは有名進学校だけあって、先輩OBたちの進学先から沢山推薦枠が来る。最初からそれを狙って一年から成績を積み上げている生徒も多い。
僕は、松陰を卒業したばかりの従兄弟の剛くんから、松陰高校へ合格した時に色々アドバイスを貰っていた。
『玲はガチンコ受験より、普段の成績維持して松陰の推薦枠狙ったら?文系なら結構良いところ来るよ?』
その時初めて指定校推薦という大学進学方法があるんだと知った。一緒に聞いていた親も、地道な努力型の僕には向いているし、受験でハラハラしなくて済むからそうしたら良いと、笑いながら言ったんだ。
その時に僕も賛同した訳では無かったけれど、入学してから周囲の負けん気の強い同級生たちと触れ合うと、確かに僕は彼らの屍を越えて合格を掴むのは大変な気がした。ひよった僕は保険のつもりで、定期テストの結果をコツコツ地道に積み上げて来た。
その結果、僕は確かに箕輪君の言う通り、そこそこな評定を貰っていた。僕は指定校推薦の一覧を眺めながら箕輪君に尋ねた。
「箕輪君は指定校狙ってるの?」
すると箕輪君は乾いた笑いを浮かべて言った。
「俺は無理。そこまで評定良くないし。あー、こんな事なら一年から頑張っておくんだったー。結構良い大学あるじゃん。」
そう言いながら顔を顰めて、やっぱり一覧表を眺めた。僕は釣られて一覧を眺めながら、ここにキヨくんの行きたい大学もあるのだろうかと思った。理系の大学は僕にはよく分からないし、一緒にシェアハウスしたいからって、そんな都合の良い条件に合う大学があるだろうか。
僕はキヨくんの背中を眺めながら、一応昼休みに聞いてみようと思っていたけれど、そのチャンスは来なかった。キヨくんに委員長会議が入ってしまったからだ。僕の方をチラッと見て、目を合わせるキヨくんの合図を感じた気がして、くすぐったい気持ちになったのは内緒だ。
釣られたように僕の目線をなぞって委員長の後ろ姿を見た箕輪君が、ニヤッと笑って僕に意味深に言った。
「お前たちって、何かアレだよな。仲が良いにも程があるって言うか。だって文化祭前は全然話もしなかったろ?委員長があんなに過保護になるとか、凄い予想外だったんだけど。幼馴染愛ってやつなのか?」
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