period

13/32
156人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
「どれだけ年を重ねたって、いつだってあの人がいるのは私の遥か先。高みを目指してなんになるの?実力以上に努力して結果、得られるものなんてたかが知れてる。必死になって、いい大学に行って?大手に就職して?出世して?それがなんになるの?そう思ってた」 「…うん」 「少しだけ力を入れて、ぎりぎりのラインで優等生やって、そこそこの友達づきあいして、そうやってやり過ごした方が賢い生き方だって」 「うん、」 「建前を使いこなせれば、ある程度は社会で通用するんだから。どうせ人と分かり合うなんてできないし、分かり合いたいとも思わなかった」 「うん、うん…」 「欲しいのは、ひとつだけだったのに……」 里央が私をぎゅ、と強く抱きしめる。 抱きしめながら、優しく背中を撫でられる。 「美千香、辛かったね。1人で頑張ったんだね」 涙声で私を慰める里央に、なんで泣くの、と思ったけれど、私の頬にも涙が流れていることに気づく。 自然と溢れていた涙に戸惑う。 なんの計算もなく、人前で泣いたことなんてないのに。 こんな風に人の温かさに触れるのも初めてだった。 少しの間、里央の優しさに甘えた。 ―――私と里央は、この時ちゃんと本当の意味で友達になれたのだと思う。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!