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繊細な神経の持ち主なくせに、いざというときは芯の強さを見せる女性。それが颯斗にとっての大和撫子だ。紗綾はまさに颯斗のなかで大和撫子のイメージだった。
「へえ。大和撫子ねえ。着物を着たどこぞのお嬢様か」
だが佐々木のイメージは颯斗とはだいぶ食い違っているようだった。でもまあいいか、と颯斗は何も言わないでいた。
「で?その大和撫子と早速喧嘩でもしたか?」
「違いますよ。まだ喧嘩出来る立場になれてないですから」
「どういう意味だよ、それ」
「簡単ですよ。まだ付き合えてないから喧嘩も出来ないんです」
少し不貞腐れた様子で話す颯斗の言葉は、佐々木には到底信じられなかった。統計を取ったことはないが芸能界でいま一番モテる男は間違いなく颯斗だ。
某有名雑誌の恋人にしたい男性芸能人や、結婚したい男性芸能人部門ではここ数年他を圧倒して一位をキープしているし、同じ業界の女優やアイドルからのアプローチの数の多さも半端ではない量だ。
選り取りみどりって言葉はこいつの為にあるんだなと佐々木は思っていた。その颯斗が好きな女を落とせずに仕事中に相手を思ったりスマホ連絡がないかを気にしている。
いわばその状態は俗に言う「まさか片思いしてんのか?お前が?」思わず佐々木は声に出していた。
佐々木にいま自分の置かれた現状をズバリと指摘されて颯斗は少しだけムッとした表情になった。自分ではわかっていることでも、それを他人から指摘されるというのは人間面白くないものだ。とはいっても、颯斗がこんな表情を素直に見せられるのは長年行動を共にしている佐々木への信頼ありきの現れでもある。
「確かに片思いしてることになるんですよね…」
颯斗のはあーっと長いため息が楽屋内に響き渡る。佐々木は信じられない思いで担当俳優の横顔を見つめた。
「嘘だろ?」
「本当です」
「お前に振り向かないとか、どんな女だよ」
「だから普通の人ですって」
「普通の女だったらイチコロだろ。普通は」
「人それぞれじゃないんですか。好みもあるだろうし考え方も違うだろうし」
「そうは言ってもなあ…。マジかよ…」
佐々木はまるで自分のことのように項垂れている。そんな佐々木を見ながら颯斗はまたスマホに目を落とした。少しくらいは自分からのメールを気にかけてくれたりしているんだろうか。今頃彼女は何をしているんだろうな、と考えていた。

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