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ぼくは何も言わずに立ち上がり、信じられないという表情を浮かべる彼女の元へ歩いていった。彼女は少し微笑んだようだったが、やがて目を伏せてうつむいた。そして言った。
「どうしてここに?」
「君に会いたかったから」
「今日、わたしがここに来なかったらどうしていたの?」
「そしたら、君に会えるまで毎日通ったさ。ぼくは、いつか必ず君に会えると信じていたからね」
彼女は首を振った。
「再び会えたところで、私たちの関係は二度と変わらないわ」
「なぜだい?」
「わかるでしょう」
彼女は顔を上げて笑おうとした。しかし、その笑顔は途中で崩れてしまった。ぼくは彼女の肩に手をかけた。彼女は抵抗しなかった。ぼくたちはしばらくの間抱き合っていた。
「ぼくは決めたんだよ」
「何を?」
「家を、名前を捨てる」
「…………」
彼女はぼくの顔を見つめたまま黙っていた。
「ぼくは生まれ変わるつもりだ。そのために家を出た。だから、もうぼくたちが離れる理由はなくなったのさ」
ぼくは彼女の手を握り締めた。そして、もう一度はっきりと自分の気持ちを伝えた。
「ぼくは君を愛している。これから先、何年たってもそれは変わらぬ想いだと思う。ぼくは、君のいない人生なんて考えられない。君はぼくにとってすべてなんだ。だから、ぼくと一緒になってくれないか」
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