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「え、また、別れたの?早っ!」
「早くないよ。続いた方。惜しかったな、もうすぐで1年だったのに」
彼と別れた次の日。本当だったら彼のアパートに泊まって、翌日は2人で映画を見る予定だった。それがこの有り様だ。
私はガラリと空いてしまった予定を埋めたくて、高校からの親友、愛香をお茶に誘った。映画のチケットを手配していたのは彼だったから、行けなくなった私の代わりにこんな風に誰か誘ったりしたのだろうか。ぜひ、そうであって欲しいと願わずにはいられなかった。
「で、原因は何なの?」
「分かんないよ。ただ、俺のことあんまり好きじゃないでしょ?ってあっちから言われて。好きだったのにな、そこそこ」
「またそれか。ねぇ、嘘つくの下手なんだからさ、もう自分誤魔化すの辞めなよ」
「別に誤魔化してるつもりはないんだけどな」
愛香はいつも痛いところを付いてくる。でもそれぐらいでちょうど良い。そんな風に言って貰えないと、私はいつか本当に自分を見失ってダメになってしまう気がする。だからズバズバ駄目出ししてくれる彼女の存在は貴重だった。
「あ!そうだ!そんな琴音に朗報があった!」
「朗報?」
「ジャーン!見て、これ!」
愛香は何かを思い出したように興奮気味にスマホを鞄から取り出すと、あるSNSの画面を私に見せてきた。画面を覗き込んで見ると、そこには結婚指輪を見せながら、幸せそうに笑っている男女の写真が投稿してあった。
「え?!これって・・・」
「優亜。あんたが大っ嫌いな、優亜が入籍したらしいよ」
私は愛香の言葉を聴いて、目を皿のようにして画面を見つめる。そしてSNSに書いてある文章を丁寧に読んでいく。
『本日、入籍しました✨
彼は私には勿体無いぐらい優しくて、
素敵な人です♥️
こんなに癒されて、自分が自然体で居られて、
ずっと一緒にいたいって思える人に
初めて出逢いました。
彼はいつも優しく、
私のことを支えてくれてます。
これからは支えられるばかりじゃなくて、
私も支えてあげられるようになりたいです。
まだまだ未熟な2人ですが、
よろしくお願いします😊』
幸せいっぱいな優亜の文章を見て、私は吐き気がした。しかし笑顔で指輪を見せてる優亜は、あの頃より少し歳を取ったけど、私なんかよりずっと可愛いことは間違いなかった。
「何これ、ウザ」
「ウザイけどさ、良かったじゃん。これで大嫌いな優亜と大好きな大雅君がくっつくことは無くなったんだからさ」
「ああ、だから朗報って言ったの?」
「そうだよ」
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