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大雅の気まずそうな雰囲気で、何となく全てを察する。
悔しいけどそこそこ顔が良くて、女子から人気がある大雅。そんな大雅と優亜が付き合ったなんてなったら、一部の女子が大炎上するのは目に見えている。優亜はさらにいじめが加速するのを恐れて、大雅と付き合っていることを知られたくないのだろう。
「別に言わないよ。興味ないし」
私は視線を逸らして、ぶっきらぼうに答えた。
本心を言うと、優亜と大雅が付き合っていることを言いふらしてやりたい。そして優亜なんて、いじめられればいい。私がなりたくてもなれない、大雅の〝特別〟になったんだから、いじれめられるぐらいどうってことないと思う。むしろ少しぐらい嫌な想いをすればいいのだ。
しかし私は、やっぱり大雅が大好きで大切で。
これっぽっちも可能性はないというのに、彼のことは裏切れないのだ。
「ありがとう、琴音。琴音なら分かってくれると思ってた」
そうやって無邪気に笑う笑顔は、本当に反則だ。そんな顔をされたら、私はもう、何も言えなくなる。
「あとさ、もう1つお願いがあって。これは琴音の負担にならない程度でいいんだけど・・・」
「何?」
「秋月さんがさ、なんか嫌がらせされてたり・・・そういうの見たら、俺に教えてくれないかな?琴音は何もしなくていいからさ。俺に言ってくれればいいから」
「わかった。ってか、知ってるんだね。一部女子から嫌がらせされてるの」
「うん、まぁ、ね」
「何日か前に、放課後、1人で泣いてたよ。教科書、落書きされたり、やぶかれたりしてたみたい。一応、大丈夫かって声は掛けたんだけど」
私の話を聞いた大雅は少し下を向くと、「そっか」と、喉の奥で呟いた。そして「教えてくれてありがとう」と力なく笑った。私は優亜のことで大雅にお礼を言われるのが、とてつもなく嫌だなと思った。
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