明樹くんは 確かにいた

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 小中ともに皆勤賞だった私が、初めて学校を休むことになった。  健康優良児な私が休むなんて、青天の霹靂とみんなは思うかもしれない。 「じゃあ、母さんも父さんも仕事に行くから、冷蔵庫にあるもの何でも好きに食べなさいね」  私はやっとの思いで頷いた。  それを見て少しほっとしたのか、母は部屋をそっと出て行った。  母のスリッパがパタパタと忙しそうな音を立て遠ざかっていく。  父の気がかりそうな声が聞こえてきたが、部屋まで上がってくる様子はない。  しばらくぼーっと天井を眺めていると、さっきまで見ていた夢を思い出した。  今では顔を思い出すのも難しくなった明樹くんの夢だ。
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