明樹くんは 確かにいた

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「咲月のために言ってるんだよ」  困ったようなため息が聞こえてくる。  私のことを考えてくれているのだろうけれど、詳しくは何も話してくれない。  聞きたいことは山ほどあるが、私も聞かない。  知ってしまうとすべてが終わってしまいそうで怖いのだ。  明樹くんがなぜ猫なのかとか、そんなことはどうでもよかった。  もう一度明樹くんに会えた、それだけで十分だった。 「きっとまた会えると思っていたわ」  ほんとうは、もう会えないかもと何度も思ったかわからない。  だけどそれを明樹くんに知られたくはなかった私は小さなうそをついた。
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