明樹くんは 確かにいた

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 優しかった明樹(あき)くんがいなくなったのはいつだっただろうか?  出会った日のことも含めて、なぜか誰も覚えていない。  私は明樹くんに会いたくてずっと探しているけれど、もう何年も見つけられずにいる。  返したいものがあるのに、明樹くんはまるで初めからいなかったかのように、私の前から消えてしまった。   「咲月(さつき)、学校遅れるわよ」  その日珍しく朝寝坊した私は、母に揺り起こされゆっくり眼を開けた。  時計は7時を指していて、急げばぎりぎり遅刻はしない。  だけどなぜだか起き上がることができない。  真面目過ぎると言われている私が、初めて学校に行きたくないと感じていた。
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