2人が本棚に入れています
本棚に追加
無料公開の期限が迫っていた! やばい! 読み切れない!
だから、仕事の合間、昼休みにも読むことにしたよ!
コンビニで買った、安くて具の少ないサンドイッチを食べながら、スマホで漫画を読むよ! もちろん口がにやけるよ! 食事中だからマスクしてなくて口角上がってるのバレバレだよ!
そんなときだった。
「君島さん、漫画読むんですね」
「ひょわあああ!?」
変な声をあげちゃった! びっくりした衝撃で漫画が上にびょっとスクロールされるよ!
話しかけてきたのは太田さん! ちょっと目つきの鋭い女性の同僚だよ! だから怖いよ! 仕事がめちゃくちゃできるよ! もちろん話しかけたことはないよ! 私コミュ障!
「もしかしてアメセカ?」
「あ…… soudesu……」
私は固まる。指が震える。緊張している。
『アメジストの世界』。私が読んでいる漫画だ。アメジストが枯渇した世界で、キャラクターたちは魔力が宿るマジック・アメジストを探しにいくのだ。
太田さんは私の隣に座る。ナチュラルに。
「私も好きなんですよ、アメセカ。今アニメやってますよね。君島さんも見てます?」
「hai……」
私は頷くことしかできなかった。口の中が渇く。ただ相手の質問に答えるだけのロボットになってしまったようだった。
「推しとか……います?」
「えっと……セラムです」
「セラム!」
太田さんは嬉しそうに驚く。
セラムは三番目のマジック・アメジストを持っていた探検家だ。髭が似合うおじ様だ。主人公たちを鞭で追い払っていたが、ついには負けてしまう。
「セラムかっこいいですよね。あのセリフのなんと素敵なことか! 私はアイクくんが好きです」
「アイクくんですか」
アイクは主人公だ。世界中のマジック・アメジストを収集している冒険家だ。
「あ、アイク……い、いいですよね」
声が震える。そんな私を太田さんはにこにこして見ている。
「そうですよね! まだ完結してないですけど、アイクは死んじゃうんじゃないかって思ってます。原作では六個集めましたけど、七個も集めると悪いことが起こるんじゃないかって。ラッキーセブンだからこそのアンラッキーセブンというか! 奪われた人たちが集まるシーンあるじゃないですか。だからきっとあいつらが復讐しにくるんじゃないかなって考えてるんです。君島さんの推しもそのうち再登場するかもしれませんよ!」
「……」
「あ、ごめんなさい! 私つい考察を考えてしまう癖がありまして」
そう言って太田さんは礼をする。
もしかして、この人…… オタク? それも、考察系のオタク?
最初のコメントを投稿しよう!