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シンシン、シンシンと、よく雪が降る夜だった。
仄明るい電灯の下で立ちくらみを静めていると、周囲はいつの間にか私を置いて銀世界となっていく。
安っぽいアパート、少し斜めになったビル、安いが売りの居酒屋、私が寄り掛かっている電灯。
「少し酔って行こうかな……」
ほろ酔い気分で帰るのもいいかも知れない。
ビールは大好きだ。
とりわけて苦味が好き。
飲み下すことで、アルコールで喉を洗ってくれるかのような感覚がすることも。
さっき恋人にフラれてからだろうか、それからは立ちくらみが激しくなった。
電灯にいつまでも寄り掛かるのも、いい加減に嫌になってきた。
過去を引きずることも、後悔することも。
もう、ビールで全部洗い流して終わりにしよう。
居酒屋には大好きなビールがある。
こじんまりとしているがお洒落な居酒屋だった。
だけど、店内は外と同じくらいにひどく寒かった。
凍えてしまいそうなので、カウンター席につくと、早速ビールとピーナッツを頼んだ。
安いを売っている店なのに、客が意外と少ない居酒屋だった。
「お嬢ちゃん。未成年じゃないだろうね?」
「違うわ……でも、少しだけ未成年かも知れない……」
「というと?」
「ここ最近、二十歳になったの」
「なーるほど、そういうことなんだね」
男は大きく頷くと、ビールとピーナッツをカウンターに並べた。
ビールは好きだ。
苦くて酔いも回るし、私はすぐにビールが好きになっていた。
他のお酒は飲んだことはないけれど。
ビールが一番だった。
「お隣。いいですか?」
見ると、厚化粧の女が一人立っていた。
「お、いらっしゃい! また来てくれたんだね! さあ、いつものやつだよ!」
男は湯豆腐と香のものと日本酒を私の隣のカウンター席に並べた。
私は無意識に頷いていたようだ。
何故、私はこんなにも……今日は人懐っこいのだろうか?
いつもはつっけんどんに返すのに?
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