きみのメロディー

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きみのメロディー

きみは混乱も憤慨も 体全部で表現をするから、 ぼくもきみの渦に一緒に吞み込まれてしまいそうになるんだ。 あるはずのブランケットを蹴っ飛ばし、 一緒になって底なし沼に落ちていきそうになる。 でも、そんなとき ぼくの心の中に一筋のメロディーが流れる。 アコースティックギターの切なくて優しくて温かいメロディーは その昔、ぼくが混乱の渦にいた時に出会って、苦楽をともにし 一緒に乗り越えてきたメロディーなんだ。 そのメロディーが流れると、 ぼくは少しだけ光を見つけることができる。 少しだけあたたかくなって、 「ここは底なし沼なんかじゃない」って気づかせてくれて 柔らかいブランケットを用意することができるんだ。 でも、きみにこのメロディーは聞こえないから、 ぼくはきみの背中に手をあてて このあたたかさをきみに伝えるんだ。 きみの手をとり、この渦から抜け出して、心地よいブランケットに包まることができるんだ。 いつかきみが一人で旅に出て、自分自身のメロディーと出会うその日まで、 ぼくが口移しのようにこのあたたかさをきみに伝えたい。
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