年月

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年月

きみが空にいないのに いない空にきみの不在を感じてしまう。 きみが当たりまえのように空にいたときは 日常の忙しさを理由にきみの存在を見ようとしなかったのに。 それでも、そんな大切なものを見失ってしまう僕だけど、 たまに空を見上げては、 優しく温かい光を放つきみの存在に癒されていたんだ。 満月のきみには満ち足りた幸せを 半月のきみには見えないきみに思いを巡らせ 三日月のきみには今宵しかない美しさに見惚れていたんだよ。 今きみが僕の空にいないのは この空に月がいないのとは少し違う。 今きみは僕の声が届かない場所にいて もう僕の助けを必要としていない。 今きみが必要としているのは 満月の夜に温かい毛布を用意する僕ではなく、 満月の満ち足りた幸せを分かち合える人なのだ。 きみと月が違うところは 月は満ちて欠けてまた戻ってくるけれど きみは年月という長い道のりを勇敢にすすんでいく存在だ。 だから今度は僕が月になろう。 きみが僕の存在に気づいていても、気づいていなくても 僕はずっと空にいる。 どんなに形が変わっても、 流れる雲に覆われても ビルに遮られていても 真っ暗闇で空中探しても見えなかったとしても ずっとずっとそばにいる。 見える時も、見えない時も まんまるの時も、どんない細くなったとしても いつでもきみを見守っているから きみは安心して道のりをすすめばいいんだよ。
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