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図書館開放クラブ。
図書委員会とは別に設けられているクラブ活動のことである。その活動内容は休日や祝日に学校の図書館を開放し、近所の子ども達を中心に、御薦めの本を紹介するクラブだ。お勧めする内容の本はアンケートや、開放日に貸出回数が多い本が基準となる。
「なるほど。それで、次の月末の土曜日が紹介日なのですね」
「はい」
「面白そうですね。その日も取材に行きます」
「ありがとうございます。ただ、今回お越しいただいたのは、その件ではないのです」
「では、一体」
すると、開放クラブの部長はソファーから立ち上がって、十冊の本を持ってきた。
「これは?」
「アンケートや過去の記録を基に選出された上位五位の本です」
「ほう。拝見してみてもよろしいですか」
「どうぞ」
新入記者は本を一冊一冊見ていった。
『老後資金二千万円の貯め方』
『あなたも出来る。毒親の切り捨て方』
『ユーチューバーか会社勤めか』
『好きなことで食べて行きたいと言う幻想』
『資格ビジネスに騙されるな』
何とも言えない気持ちに記者はなった。
「……あの、これって、本当に上位の本なのですか」
「はい。恐ろしい事に」
空虚な現実がそこにはあった。
「何だか最近の子どもは大人びていると言うか、しっかりしているというか」
「何だか悲しいです」
「はい。もっと自由に生きて欲しいです」
明るい取材のはずが、たちまち暗くなってしまった。
「この本、紹介するのですか」
「それが、このクラブの存在意義です」
「素晴らしいです、そのプロ根性」
「ありがとうございます」
「では、当日も取材に伺います。ただ、一つお願いできますか」
「はい。何なりと」
「当日、絵本を読んでいただけますか。とびっきりメルヘンチックな」
「どんな風な」
「カチカチ山とか」
「それ、解釈を変えれば、復讐劇ですよ」
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