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迷宮の掃除屋
石造りの地下迷宮の床。
粘液質な音を立てて、ずるりと這いずり回る、水たまりのような物体。
水たまりにしては全体的に厚みがあり、その表面はぽこぽこと泡立っては割れて、その身に戻ることを繰り返している。表面は迷宮の薄明かりが反射して、てらてらと照り返しを見せているが、澄んだ透明度ではなく、不透明でくすんだ暗緑色をしている。
動物や植物など、あらゆる生物には思考力や意志があり、言葉は交わせずとも魔術を用いれば意思疎通を図れる。しかし、過去の文献を探って見ても、この生物と意思疎通できたという事例はない。ただそれは、人がそれを試みる価値を見出せなかっただけかも知れない。
しかし、誰も知る由もないが、この生物には自我が在った。
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