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桐山とその背中を追い掛ける学生たちを見ながら、月島と中井は羨ましい限りですよと笑っている。特に中井はこの村の人間だから、桐山家の子孫が多くの人に慕われているのを見るのは感慨深いようだった。
「この村を桐山家が支えていたというのは、よく理解できます」
中井の優しい表情に、深瀬も桐山家が無事に未来に繋がったことを心から喜んでいた。あの話を聞いていただけだと、桐山家に引き取られた子は不幸になったのではないかと想像してしまっていたが、村の人たちの期待を受けながら、幸せにこの村で生活していたのかもしれない。
「深瀬先生、早く」
「月島さん、これですよね」
本殿の裏手に回った学生たちが呼ぶ声がして、三人は慌てて追い掛けることになった。追いついてみると、小さな鳥居が建てられ、その先に洞窟の入り口を守るように祠が建っているのが解る。その奥はこんもりとした丘のようになっており、ぽっかりと空洞があった。
「へえ。不思議ですね」
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