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「この辺りの地形が独特なんですよ。ずっと下り坂になっていますからね。それに洞窟そのものは地下水が発生して、この中途半端なところから吹き出たことがあるみたいですね。ほら、あっち側に池があるでしょ。あの池の水は、かつてはこちらに流れていた地下水が集まっているんです」
「ああ、あれか」
祠から左側に視線を向けると、草に覆われて解り難いが池があるのが見えた。水はあちら側に逃げるようになり、ここが通行可能な出入り口となったということらしい。
「それでも昔は水が溜まりやすかったみたいですけどね。農業用水として使えるように整備してから、洞窟の中に水が溜まらなくなったという話を聞いたことがあります」
中井がそう付け加え、この近くにポンプもあるんですよと教えてくれる。脱出用にと考えられていた洞窟は、近代化するまでは危険と隣り合わせの場所だったということか。祠があることから考えても、何度か事故があったのかもしれない。
「なるほど。地下を通ろうと企んだ人が、大正まで出てこなかった理由ですね。お嬢様が通ろうとした頃には、こちらの整備が進んでおり、安全だったわけですか」
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