真夏の因果律

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「自分たちがいつボケるか解らない。何が必要で何が必要ではないか判断できなくなってしまうのは嫌だ。と、祖父母は主張している。認知症になってしまうと、法的に色々と面倒になる前に片付けたいようだ。本人たちはすでに介護付き有料老人ホームに入居した後、家は片付けよう片付けようで今まで後回しにしていたことが、ようやく気掛かりになったらしい。生前相続できるのならばやっておきたいと、そうも言っているらしい」  溜め息とともに断りにくい状況であることを説明した。理由はしっかりとしたものなのだ。それだけに、誰かがやるしかないのである。 「老人ホームに入る前に売らなかったんですね」  それに深瀬は順番がおかしくないですかと訊くが 「家がでかいんだ。しかも物も多い。さらに土地もでかい。土地の有力者だったという歴史もあるし、誰か相続すればいいじゃないか、みたいな話もあったんだよ。先祖代々の土地だし、親族も多いのに村から誰もいなくなっていいのか。そんな旧弊的な議論がついこの間まであったんだ」  と、これにも明確な説明が出てくる。
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