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一ノ瀬睦美
ラブホテルの前で一ノ瀬睦美は固まっていた。目の前にある丸々とした背中はスーツのストライプを歪ませている。男は自分の父親と同じか、もっと上なのか、睦美には分からない。睦美には中年の男の年齢など判別ができない。すべて「おじさん」でひとくくりにしてきた。
はげ上がった後頭部が視界に入って思わず目を伏せた。
逃げ出したかった。
睦美のそんな気持ちを見透かしたように、スマホにメッセージが表示される。
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