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僕の就職
僕は高校を出ると町の印刷所に就職した。
その頃にはほとんどのコンビニで酒が売られていて、売上が見る見るうちに減っていったのを、僕でも感じ取れた。
やがて、老人会やイベントでの大量発注もコンビニに取られて、2階で過ごしていた僕は店から客の気配を殆ど感じる事はなくなっていた。
僕は何度も父に「ここをコンビニにしよう」と説得を試みたが、無口で頑固な父は首を縦に振らなかった。
家にお金が無いのは当然で、僕は大学に行くなら自力で奨学金を借りて行くしか無く、そこまで進学する気は無かった僕は働く事にしたのだ。
進は2号店のオーナーという肩書だったが、いつも外車に乗って遊びまわっていた。
進は19歳の時には、見た目が派手で綺麗な人と結婚して翌年には子供も見かけた。
僕は20歳を迎えても手取り12万8000円、ボーナス無しの平社員で、勤めていた印刷所もIT化、Windowsの普及で一般人もパソコンを持つ様になるなどの影響で、仕事が減っていくのを感じる日々を過ごしていた。
僕は頑なにコンビニにする事を拒んで貧しく暮らす父や、自分は何もしてない癖に悠々自適に生きている進を感じる暮らしに耐えられなくなった。
僕が父から離れた理由はそんなところだ。
ちなみに母も同じ理由だったのだろう。
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