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妻とは社内恋愛、齢は2つ下、プロポーズ、思い出・・・語る事は何もない。 結婚してすぐに妻は「もっとお給料のいいところに転職して」と毎日せがんできた。 妻も私と同じ会社で勤めていたが、母の介護があるのでパートだった。 二人の手取りは合わせても月20万を超えるかどうか。 妻の言いたい事は分かる。 僕もそうしようとまた職業安定所に通ったが、あそこに通っても無駄だと分かっていた。 「今日もダメだったよ」が「ただいま」の代わりに言う言葉になっていた。 妻の返答は 「明日も頑張って」から 「そう」に代わり 「ちゃんと探してる?」になって 最後は無視していた。 僕たちはどうして好きになったか、一緒になったか分からなくなった。 それでも僕は夫婦生活を続けるべく 「誰でも月40万」 のネットのうたい文句に飛び込んだ。 せっかく10年以上勤めた給食会社を辞めて、入社した会社。 とんでもない肉体労働、中に何が入っているかも分からないダンボール箱をひたすらトラックに積んで、トラックから来たものは倉庫に搬入する。 稼働時間は5,6時間だけど早朝から深夜まで15時間くらいは拘束されて、肉体はボロボロになった。 そしてやってきた給料日、手取りは8万円現金支給。 勇気がない僕は黙っていたが、僕と同時期に入社した者が社長室に怒鳴り込んでくれた「話が違う」と。 社長はなんら悪びれず「月40は10年目からだ」と言い切った。 誰がこんな仕事を10年も出来るだろうか。
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