スラブ娘の別れ

3/33
前へ
/33ページ
次へ
家に帰り着いた時には、日はとっぷりと暮れていた。 灯りを点すと、ありふれた集合住宅の、ありふれたリビングが照らし出される。 夫は、火酒の瓶に囲まれて項垂れていた。いつも通りの光景だ。 私は感情を押さえつけ、明るい声を出した。 今日は、ちょっと良いお肉を買って来たのよ。あなたの好きなシチューを作るわね。 「マーシャ、どうだった?」 彼の声は震えていた。私は質問に応えず、続けた。 私も、お酒を一口頂こうかしら。 「マリア、俺の質問に答えろ!」 ガラスが割れる音が、室内に響く。 私は黙って俯き、首を振った。 「済まない…済まないマーシャ…」 ややあって、夫は声を絞り出す。それからドタドタと足音がして、玄関のドアが乱暴に閉じられた。 今夜もまた、あの安酒場へ行くのだろう。701c4475-62eb-40e7-b7fb-581faa070a56
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加