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「大地」
「涼さん、お疲れ様っす」
「はい、ココア。高校三年間お疲れ様、それから卒業おめでとう」
「ありがとうございます。じゃあ俺からははい、今日の飴はいちご味です」
「いつもさんきゅ」
ベンチに並んで腰を下ろす。
この公園内にも桜の木はあるが、あいにく花が咲くにはまだ早い。
「涼さんこれもう読みました?」
「うん、昼休みに読んだ」
「俺も待ってる間に読んじゃいました。すっげーいい終わりだった」
「オレも思った。最後の最後までいい話だったな」
涼と大地が出逢うきっかけになった漫画誌、特にふたりが気に入っている漫画は奇しくも大地が高校を卒業する今日の日に最終回を迎えた。
壮大なストーリーは時に切なさも孕みながら、美しい終わりが用意されていて。
涼の提案で前号まで涼が買ったものを読んでいた大地が、最後くらいと購入したのは正解だと涼は思う。
「ねえ涼さん」
「んー?」
「俺、あんまり本読むタイプじゃないんです」
「そうだな」
「はい。だから、一番お気に入りの話も終わっちゃったし、もう買いに来ないかも」
「うん」
オレンジの空色が風に混ざってふたりの間をくるくると吹き回る。
まだまだ寒いはずなのに、甘い香りが鼻をくすぐる。
「そしたら店員さんと客でもなくなっちゃうんすけど、どうしますか? ちなみに俺は絶対に嫌です」
「……ふ、お客さん可愛いですね。白くまみたいな感じ」
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