大井町まであるく人身事故の京急

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 前回からの京急の音がきこえない、のつづきではないけれども、やってこない京急の電車のおはなしである。  やってこないのかやってこられないのかはわからないが、人身事故というものはあり、とうぜん京急電車にもある。おくれているのならば品川まで京急にのっていけるのであるが、電車がこないのであれば品川までいくのに京急にのらなければならないというのがそもそもできない。  家をでてあるいて駅までいってみて、階段をあがると、改札をふさぐようにして、◯月◯日、◯時◯分、鶴見市場~八丁畷において人身事故発生、京急本線運転取り止め、◯時◯分ころの再開予定、というものの書かれた柵がある。だから、改札すら通れない。なのでそのまま、やっていないおとどけいきゅうをすぎ、左へおれ、つづく第一京浜をよこぎる歩道橋をわたってあるいていく。だいぶんふるい歩道橋で、あるくところがかまぼこ型の曲線のようになっていて、下の第一京浜をトレーラーや大きなバスが通ると、こちらもゆれている。おりるのに急な階段をおりていく。  こどものこえがまだきこえない、ひるでもうすぐらい大井公園の樹々のなかのスロープをのぼっていく。むすめとは、いまあるいている下の公園ではとてつもなくどんぐりをひろい、ちいさいころ上の公園にあるブランコすべり台ではあきれるほどのったり、さらには、あかちゃんのころ、ベビーカーにのせて、このスロープの道を上から、「だいじょうぶ」「だいじょうぶ」とすこし手をはなしてすべらしてあそんでいたところ、いきおいがよすぎて、むすめのベビーカーまでおいつけず、よこだおしになるまでにいたってしまい、けがにはならなかったものの、むすめはおおなき、いっしょにいたおかあさんにはしこたまおこられた。そんなのぼり坂をいまはあるいている。  いちだんたかくなっているブロックべいのつらなりをへいきん台とみたてて、マンションとマンションをすりぬけてあるくようにして、むすめともいくども通ったことのある仙台坂上の交差点の横断歩道の青信号めがけてななめにつっきっていき、大井銀座商店街のアーケードへとはいっていく。ところどころアーケードがないところがあるものの、気になる居酒屋をはじめとして、むかしからあるのであろう電気屋さん、おしゃれなのかどうかわからないがレストラン、ふぐ屋もあったか、クロネコの営業所、うなぎ屋、もうしばらくいったところを右にはいるところにもあるうなぎ屋、その前によくならんでいる中華屋、たしかひるはチャーハンが有名なのか、どこかに熱帯魚屋もあるな、そんなことしていたら、ゼームス坂上の信号も青であり、すすむ。かどにラーメン屋、二階のざしきになんどかいっているとんかつ屋、すぎるとギョウザ屋、いくつかののみくいの店舗をとおり、大井町の駅へちかづけばちかづくほどチェーン店がおおくなるのも気のせいではないらしい。  さあ、もう、大井町駅の改札である。ぐるりまわりこむようにしてあるいて駅員に定期を見せながら、「京急、人身事故なので」と、なかに入っていく。すると、このあと、品川をすぎ、田町でのりかえて、いつもとおなじ山の手線にのることになる。
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