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「何か想い出しました?」
ママは、微笑みかけてくれる
「あ~…まあ…しかし、もう四十五年も前なんで」
苦笑いしながら答えた
「ご苦労おありでしたね」
誰かに言ってもらえると嬉しくなる言葉だなと温かくなる
「過ぎてしまえば何て事なかったですね」
「あら、何か意味深…」
「わかります?いや~親父のワルさが時を経て今明るみに出まして…腹違いの弟が…」
「そうでしたか…何か言って来られたのですか?」
洒落たガラスの皿にミックスナッツを俺の前に置きながら話を聞いてくれる
会うか、会わず知らぬ存ぜぬするか迷う
腹違いの弟の存在自体が
母や弟…俺に対しての裏切りな気がしてたまらない
けど、父の血を分けられた義弟に会ってみたい気もする
心の内を話す
高齢の母に相談できない
実弟は、不倫相手の姓が付けられているから話したくない
俺の情緒は上がったり下がったり忙しい
「複雑なんですね」
優しいママの声が心地いい
「あっ、マスター。マスターならどうしようと思います?」
同じ男性として意見を聞いてみたかった
「私ですか?…ん~色々迷って悩みますがとりあえず会ってみますかね?」
「とりあえず?」
「そう、とりあえず。向こう側が探して接触して来るんだし、とりあえず会ってどんな弟か見てみる」
「なるほど」
「そして付き合って行けるなと思えばたまに会うし
何か違うなと思えば付き合いを止める…かな~
すみません、部外者が…」
「いえ、俺のガチガチに固まった考え方だけじゃ答えがでなくて」
首をすくめて笑ってみた
「これは、私から」
そう言って差し出されたのは
━オールドファッションド━
ウイスキーにアンゴスチュラビターズ、角砂糖、スライスオレンジ、スライスレモン、チェリーに炭酸を入れたカクテルだった
俺を見つめ
「我が道をいくです」
俺は、とてつもなく勇気がもらえた気がした
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