会ってみます

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弁護士の及川さんが 探しに来てくれるまで 俺らは、黙って見つめあっていた 場所を変え ロビーラウンジの窓側に俺はいる 明るい場所で見ても やはり他界した親父に似てる DNA検査をしなくてもわかる ウチの血が入っているのがわかる 切れ長の目 父親似のちょっと団子鼻 そして耳たぶにピアスの様に左右同じ場所にある黒子 ウチの血を引く男系にしか無い ピアス黒子 コイツにあるって事は… 「坂牧さん、彼が『真守邦彦』君です 公的機関で鑑定…」 及川さんが話しているのを遮る 「いえ、及川さん。 彼…邦彦君は、俺の父邦定の血が入ってます。 邦彦君は、父によく似てる… そして坂巻の男しか無いモノも出てるし間違いないです」 静かに答えた 「では、鑑定しないで受け入れる…で、よろしいですか?」 「ええ、はじめまして邦彦君 俺は、坂牧 薫。まさか五十を過ぎて弟が出来るとは思ってもみなかった」 右手を出した 「薫さん…この度は色々申し訳ありません。 母と僕の我が儘で… 母は、もう先が無くて… 本当にすみません」 一向に顔は上がらない 「邦彦君…君のせいでは無いよ 父と邦彦君のお母様がどう言うやり取りをしたかは僕達にはわからない そして父は早々亡くなっているし 四十年以上経っている話だ 謝罪はいらない 君はこれからどうしたいのか どうするべきなのかを考えて行こう ただ、会って10分も経たないのにこんな下世話な話をするのはどうかと思うが 父の遺産は、もう無い。分けられない 俺が言えるのはそれだけだよ」 思わず笑ってしまった 「ありがとうございます 遺産を寄越せなんて言いません ただ、僕は生活において「母さん」って存在だけで 父も祖父母も兄も姉も弟・妹と呼ぶ人間がいなかった 母ももう残り少なくなってます この先、家庭を築く事はしないで生きていくつもりです なので、少しの間薫さんを『兄さん』と呼んでいいですか? 少しだけ家族ごっこをさせてもらえませんか?」 真剣に言われる 「えっと…俺は構わないよ」 自然に答えを返してしまった 邦彦君は、ニッコリした 「ああ、ただ、うちの母と弟には君の事は言わないつもりだよ 弟は、特に君の姓と同じ『真守』って名付けてるから 多分君と会うとなると心中穏やかじゃ無くなると思うんだ。 理解していただけるか?」 優しく問いかけた 「はい…それは理解出来ます。 名前も申し訳…」 「邦彦君、君じゃないよ うちの…俺らのクソ親父のせいだよ」 テーブルの上に手をついて謝罪する 邦彦君の拳に手を置きトントンと叩いた 同じ種から違う腹から生まれた弟が 謙虚すぎて涙が出そうになった 彼は、謙虚過ぎる程謙虚で 解放してやりたいと思った
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