会ってみます

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あれから僕らは時々 会うようになった 俺が昔住んでいた場所と 邦彦が住んでいる場所が近かったから話もはずんだ 邦彦は、俺の事を「薫兄さん」と呼ぶようになっていた 俺は「邦彦」と呼び捨てにして 邦彦が生まれてからずっと兄弟のよう 端から見れば本当の兄弟… それ以上に兄弟らしい兄弟に見える位 兄弟…いや、兄弟ごっこをしている このまま楽しい時間だけが過ぎていく子供の頃とは違う問題があった 病を患っていた邦彦の母が 何度か危篤に陥る 俺は、邦彦の母には挨拶はしていない 邦彦は受け入れたが 邦彦の母は受け入れがたかった その日邦彦と邦彦の友人でもある弁護士の及川君と 三人で夕飯をとっていた時 けたたましいベル音がした 邦彦のスマートフォンだ ある場所からの電話が直ぐにわかるようにセットされた音 それは、誰が聞いても直ぐにわかる 緊急な電話だと 邦彦は、直ぐに電話に出て 顔が青ざめて行く… 及川君は、その顔を見ると 直ぐに電話をし、ハイヤーを手配した それを見て俺は、お勘定をし外でハイヤーを待つ ハイヤーが到着と同時に 邦彦達も出てきた 俺は、ここで離れる気で居た 「…薫兄さんも来てもらえませんか?」 震えた小さな声が聞こえた きっとこの母子は、日向に出ないように出ないように生きて来て 二人だけでどうにかして来ただろう その片割れが居なくなるのは怖いだろう 「見送りに行くぞ」 と、手を握った 「邦彦、僕も行くよ」 及川君も手を握った 三人でハイヤーを飛ばし病院へ行く また意識を戻してもらえればいいんだが… 最初で最後になるであろう挨拶が出来ればいいと強く思った
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