黒いのは

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親父は、クソか…… 俺に真守に愛人の名前付けるか 普通 母ちゃん本当に気付いてなかったのか 疑問が残る事ばかりだ 「薫…お疲れ様」 振り返ると親父… いや、親父とウリ二つの龍彦伯父さんがが立っていた 親父より二つ年上の伯父 優しくて気弱で親父より背が高くて 昔は、伯父さんに似ればよかったなってよく思った 「伯父さん…」 「…飲むか」 グラスを手渡されビールを注がれた 「あ、伯父さん…」 伯父さんは、勝手に自分のグラスに注いで 「薫、お疲れ様」 と、グラスを少し持ち上げた 「伯父さん…俺、こっちに埋葬しようと思ってて もう、四十年以上預けっぱなしの親父もこっちに引き取ろうかと思っているんだけど…」 黙って聞いてくれてた 「なぁ、薫…ちょっと話聞いてくれるか」 伯父さんは神妙な顔をする 「はい」 「昔さ、オレは人生の選択を誤ってしまったんだよ そして、邦定と花栄ちゃんに迷惑かけて申し訳なかったんだ 罪滅ぼしじゃないけど薫の好きにしていいぞ 移すなら寺には、オレから伝えるから何にも心配するな」 過去を思い出しているのかグラスをじっと見つめている 「伯父さん?」 「ん?ああ…間違えると後悔ばかりだからな」 「ふ~ん… そう言えば藍子伯母さんって算盤の先生だったんだって?」 「ん?ああ…富美ちゃんから?」 「うん、チラッて聞いた」 「そうか… ま、選択を誤るなかな」 意味深に言うからつい聞き返した 「何を後悔してるの?」 「んっ……」 遠くを見ながら話し出す 「結婚する前にお付き合いした人をだいぶ傷付けてしまってね」 「結婚前でしょ」 「結婚前も後も…だ 勤めていた会社の人の妹さんでな おとなしくて可愛らしい女性(ひと)だった 二人で川沿いをただ黙って歩くだけで楽しかった」 目を細めて話す伯父さん 「彼女が手伝いに行ってた場所が悪かった 藍子の算盤教室で大分辛い思いをしてたらしい で、積極的に藍子が来るのが新鮮でなびいてしまったオレの後悔だ………言うなよ?」 苦笑いしながらオレを見た 「伯父さん? もしかしてその人と会ったりしてたの?」 「邦定が転院する日たまたま会ったが…」 え…… 俺の頭の中が混乱する…
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