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「親父、もうじき逝って五十年だよ。弔い上げだよ。親父の事知ってる一番年下は、真守か…真守の所は子供生まれているし坂牧は、安泰だよ。
俺は、不出来ですまん…」
墓石に手をついて親父に語りかけた
「あれ?薫ちゃんかい?」
墓の奥から声が聞こえた
「あれ?おばちゃん…」
墓に隣接する家の窓から知ってる顔が見えた
「ここが新しい家なのよ。お茶でも飲んでって」
父の兄嫁藍子さんから誘われた
「あ、じゃあ、仏壇にも線香あげさせてもらいます」
そう言って墓を離れる
昔のばあちゃん家は、うなぎの寝床のように長い家だった
まるで昔、間口で税金が決まる京都の建物のような玄関だった
あの頃は、いとこ達とも仲がよく
夏休みは宿題を持ってホームステイ状態だったな
「藍子さん、ご無沙汰してます」
仏壇に線香をあげ振り向きご挨拶をする
「薫ちゃん、変わらないね~」
お茶を入れながら藍子さんの目が細くなる
あっ……
この顔…実権がばあちゃんから藍子さんに移った頃からたまにするこの顔
自分の子供達より何かが上回った時にする顔…
昔は、成績から習い事、なんなら木登りや自宅前でしたかけっこに至るまで自宅の子供が負けたりすると
こんな顔をする
俺はこの顔が嫌いで嫌いで仕方がなかった
値踏みされている気分になる
「苦労してないからですかね?」
笑い飛ばしてみた
「やだ、薫ちゃんしなくていい苦労してるじゃない。
結婚だってしたし、どうやったら結婚出来るか聞きたいわ」
……これは完全にイヤミだよな
もう、こう言うやり取りが嫌いで寄り付かなかったのに…
「アハハ、それは真守に聞いた方がいい話ですよ。アイツ今じゃ一国一城の主ですから…僕は、無為無能ですから」
やっぱり藍子さんと話すのは疲れる
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