不甲斐ない長男

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不甲斐ない長男

11月頭 仏花と水桶を持って寺の敷地を歩く 歩くとザリザリと玉砂利の擦れる音が響く程 平日の墓地には、ひとけが無い 祖父母が管理していた墓に 親父は、埋葬されてる 祖父母が『ここに入れなさい』 って言ったらしい 俺の母は、それを『守っている』と言っていた そんな事を言われているとは知らないだろう 嫁に出たはずの伯母達は、それを気に入らないらしい 確認したくても祖父母ももう他界して二十年以上経つしな… 父の兄、伯父は俺らの生活に口も金も出せないのが負い目なのか 墓守りが居なくなると困るのか 何も言わないでいてくれる 「親父、久しぶり。来たよ」 ささっと回りの掃除をし 花を活け束の線香に火をつけ 線香皿に乗せた 『親父、もう45年だよ』 手を合わせ墓石を見ながら呟いた 俺の父親 邦定(くにさだ)は、俺が小学校一年生の時に病気でこの世を去った 病気発覚から1ヶ月半と言う短い闘病生活で本当に呆気なく逝った 俺ら、意識失う二時間前に見舞いもしていたのに 「じゃあね、また来るね」 「おう、待ってるぞ」 って、待たないで逝った 「ある意味 (いさぎい)いよな」 もう四十年以上も経つと笑い話にもなってる
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