―― 序章 ――

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「な」  目を見開いた昼斗は、エアコンの表面よりもさらに白い機体を直視した。  一階にあった昼斗の部屋の大半を、落下してきた〝頭部〟が破壊している。ガラス片や木片、コンクリートや砂埃が、それまでローテーブルの上に詰んであった、課題の資料と共に風に舞っている。  瞬きをして現実確認をしてみた昼斗だったが、壁の一角から覗く青空は、紛れもなく自然のものに思えたし、かといってそこに存在する巨大な――人型のロボットと表するしかないフォルムの物体もまた、幻覚には思えなかった。 「……」  しかしながら、人型の巨大なロボットなど、少なくとも開発されたというようなニュースが、この世界で報道された事は一度もなかった。無論、昼斗も知らない。  人間とは、信じられない出来事に直面した際、まず夢か疑うのかもしれない。  昼斗もたっぷり五分は、座ったままで硬直し、白い機体を見ていた。  続いて立ち上がり、一歩、二歩と、後退った。そのまま後ろ手に引き戸を引いて、隣室へと向かう。テレビの音が響いてくる。芸能人の明るい声が響いてくる。一度唾液を嚥下し、昼斗は振り返った。そこには両親がいるはずだからだ。
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