63人が本棚に入れています
本棚に追加
「な」
目を見開いた昼斗は、エアコンの表面よりもさらに白い機体を直視した。
一階にあった昼斗の部屋の大半を、落下してきた〝頭部〟が破壊している。ガラス片や木片、コンクリートや砂埃が、それまでローテーブルの上に詰んであった、課題の資料と共に風に舞っている。
瞬きをして現実確認をしてみた昼斗だったが、壁の一角から覗く青空は、紛れもなく自然のものに思えたし、かといってそこに存在する巨大な――人型のロボットと表するしかないフォルムの物体もまた、幻覚には思えなかった。
「……」
しかしながら、人型の巨大なロボットなど、少なくとも開発されたというようなニュースが、この世界で報道された事は一度もなかった。無論、昼斗も知らない。
人間とは、信じられない出来事に直面した際、まず夢か疑うのかもしれない。
昼斗もたっぷり五分は、座ったままで硬直し、白い機体を見ていた。
続いて立ち上がり、一歩、二歩と、後退った。そのまま後ろ手に引き戸を引いて、隣室へと向かう。テレビの音が響いてくる。芸能人の明るい声が響いてくる。一度唾液を嚥下し、昼斗は振り返った。そこには両親がいるはずだからだ。
最初のコメントを投稿しよう!