―― 第二章 ――

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 ――昴の手が悪かったと、昼斗は内心で言い訳していた。 時折肌を擽るように、昴の指先は動いたし、寝息が肌に触れ、時には耳を掠めた。  寝ている昴に自覚はないのだろうが、朝という時間帯、昴の腕の中でギュッと目を閉じた昼斗は、己の雄が存在感を主張し始めた事に気が付いていた。朝勃ちだ。  ここ何年も、性欲が減退気味だったのもあり、何故こんな時に限って元気に生理現象が起きるのかと悲しくなったが、それだけ人の温もりに触れる機会が無くて、昼斗の体自体が飢えていたのかもしれない。  昴の指先に乳首をTシャツの上から弾かれた瞬間、思わず昼斗は声を上げた。 「昴。起きろ……」 「……」 「ッッッ」  その瞬間、昴の右手の人差し指と親指が、昼斗の左乳首を押しつぶすようにした。 「っ……」  声を堪えたが、そこから生まれた熱が、昼斗の陰茎に直結する。 「昴……お、おい……ッ」 「ん? あ、ごめんね、義兄さん。おはよう」  するとその時、やっと昴が目を開けた。いつもと同じ微笑を湛えている。それを見て気が抜けた昼斗は、顔を背けて息を吐いてから、一度目を伏せた後、口を開いた。 「シャワーを浴びてくる。離してくれ」 「珍しいね。いつも夜しか浴びないのに」 「……きゅ、休日だから」  実際には、もう出さないと収まりがつかないと思っていたのだが、己を〝義兄〟と呼ぶ昴に、そんな事は悟られたくなかった。 「そうなんだ。平日は、睡眠時間の確保が優先という事でいいのかな?」 「あ、ああ。離してくれ」 「今日は今季一番の冷え込みらしいから、もう少しこうしていたいんだけど」 「……」 「それに元々は俺、あんまり朝は早い方じゃないんだよね」  明るい昴の声と、昂っている自分の体の狭間で、昼斗は泣きたくなったがそれは堪えた。 「……入ってくる、離してくれ」 「分かったよ」  昼斗なりに強く述べた時、あっさりと昴が腕から解放してくれた。その瞬間には、昼斗はベッドをはい出て、一目散に浴室へと向かった。脱衣場で服を脱ぎ捨ててから、勢いよく中へと入る。そしてシャワーを出し、冷静になるべく、頭から温水をかぶった。  そして少し落ち着いてから、シャワーの勢いを変えて、浴室の椅子に座った。  自慰をするなど久方ぶりだなと思いながら、ちらりと下腹部を見る。 「ん」  手を添えれば、すぐに昼斗の陰茎は反応した。右手で緩く握って、二度・三度と動かせば、すぐに大きく存在を主張するように変わる。シャワーの音もあるから気づかれる事もないだろうし、処理もすぐに終わる。そう考えていた、その時だった。 「義兄さん、下着を出すの、忘れてるみたいだけど――……」 「!」 「……――へぇ。毎週末の朝、シャワーを浴びるのは、また色っぽい理由みたいだね」 「!!」  開け放たれた浴室の扉のところで、シャツに黒いエプロン姿の昴が、微笑を浮かべていた。  ――見られた。  その上なにやら勘違いされたと悟り、真っ赤になった直後、昼斗は真っ青になった。言い訳のしようがない。 「言ってくれたら、手伝うのに」 「……へ?」  そこへ昴が入ってきた。ぽかんとして昼斗が目を丸くしていると、シャワーを止めた昴が、濡れるのも特に気にした様子もなく、床にしゃがんで、じっと昼斗の陰茎を眺めた。慌てて手を離した昼斗に対し、唇の片端を持ち上げて綺麗に笑ってから、昴があっさりと両手を伸ばし、そして上目遣いに昼斗を見る。昴の両手が、昼斗の陰茎に触れる。 「えっ」  そのまま昴に唇で先端を咥えられて、昼斗は驚愕して目を見開いた。僅かに萎えかけていた陰茎が、すぐに再び張り詰める。昴の口腔は熱くて、ねっとりと舌を動かされて鈴口を刺激された瞬間、昼斗は震える息を詰めた。 「ま、待て、待ってくれ……っ、ぁ……昴……」  しかし昼斗の制止など聞かず、昴が両手と口で巧みに昼斗の快楽を煽る。すぐにガチガチに張りつめた昼斗の先端からは、先走りの液が零れ始める。 「ん、っ」  昼斗は片手で口を覆い、熱が集中し始めた腰の感覚に、這い上がってくる快楽の予兆に、困惑しながら言葉を探す。 「待っ、出る――っ、ぁ……ァ……ッッ」  昴に強く吸い上げるようにされた瞬間、昼斗は放った。肩で息をしながら、昴を見る。口の中に出してしまったと気づいて動揺していると、昴の喉仏が上下したのが分かった。 「ごちそうさま」 「!」 「朝食はオムレツとトーストだよ。早く出てきてね」  なんでもなかったかのようにそう告げると、シャワーを出して手を洗ってから、昴が浴室を出ていった。残された昼斗は、暫しの間、唖然としたままでしまったドアを見ていたのだった。
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