―― 序章 ――

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「父さん、母さん、あの――」  言いかけて、昼斗は異変に気付いた。真正面に、父のボトムスと同じ柄を纏った脚が、二本揺れている。その時、グチャリと音がしたので、昼斗は視線を上げた。すると、巨大な蟻と表現するほかない存在が、父の頭部を噛み砕いていた。グチャリ、また、グチャリと音がする。父の頭部はかみ砕かれ、そこから流れ出した血液が、シャツとボトムスを赤黒く染めてから、靴下の先に集まり、ポタポタと床に垂れていく。  呑んだ息が喉で凍りつく。  本能的に恐怖を感じ、逃げ場を求めてさっと隣を見れば、そちらでは別の巨大な蟻に、母が貪られていた。  場違いなほどに明るいテレビの音声だけが、日常の色を残している。  しかしそれ以外の全てが、非日常的だった。  蒼褪めながら再び後退し、自室へと戻る。
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