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目が覚めると、いつもと同じように体が綺麗になっていて、昼斗は昴に抱きしめられて眠っていた。ゆっくりと二度瞬きをしてから、昼斗は昴の方を向く。すると目を開けていた昴が目を細めて笑い、より強く昼斗を抱き寄せた。その温もりが嬉しくて、非常に惹きつけられて、思わず昼斗は泣きそうな顔で笑った。
もう、己の気持ちには、疑いようがなかった。昴の事が、好きでたまらない。
昴の存在が、特別に思える。その眼差しも、温もりも、何もかもが愛おしい。
「おはよう」
昼斗の額に、昴が口づける。その柔らかな感触に、胸が疼いた。幸せでたまらない。幸せが、怖い。こんなにも愛されるというのが、恐ろしい。昼斗にとって、幸せとは壊れるものの象徴だ。だが、昴がいてくれるだけで、それだけで、昼斗は現在、幸せだった。
「ねぇ、義兄さん。俺の事が好きって、本当?」
「……」
「俺、すごく嬉しかったんだけどね?」
優しい声で昴に言われ、昼斗は――ごく小さく頷いた。そうしていたら、視界が滲んだから、己が泣いているのだと気が付いた。
「昼斗? どうしたの?」
「幸せで……」
「うん?」
「……っ、昴。好きだ」
「どうして泣いてるの?」
「幸せすぎて」
素直に呟くと、昴が虚を突かれたような顔をした。それから、昼斗をより強く抱き寄せる。だから昼斗には、昴の顔が見えなくなった。ただ厚い昴の胸板に額を押し付けて、ギュッと目を閉じる。ポロリと涙が零れていく。
「昼斗は、俺の事が好きになったんだ?」
「ああ」
「本当?」
「ああ」
「そう――昼斗。俺はね、昼斗の事が……」
昴はそう言うと、一度言葉を止めた。そしてほぅっと吐息すると、昼斗の体を腕から離して、起き上がる。昴は震えている昼斗の体を支えて抱き起し、それから真面目な顔をして、視線を合わせた。まじまじと、目を潤ませている昼斗を、昴が見る。
「……そんなに、俺の事が好き?」
「ああ」
「もう一回、きちんと言って」
「好きだ」
口に出すと、堰を切るように、想いが溢れかえってくる。昼斗の胸中を、昴に対する愛情が埋め尽くしていく。再会したその日から、今日にいたるまでの、昴の様々な表情が、声が、脳裏を過ぎる。昴が、昼斗の目元の涙を拭う。瞬きをした昼斗は、しっかりと頷いた。
「好きだ。お前の事が好きなんだ」
堪えきれずに、昼斗は想いを告白した。
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