―― 第八章 ――

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 昼斗は己の機体であるエノシガイオスから聞いた言葉を、正確に報告した。両手の指を組み、その上に顎を載せて、三月は報告を聞いていた。それは室内にいた他の管理官も同様で、ソファに座っていた昴も同様である。 「――お話は分かりました。ですが、エノシガイオスを破棄ですか……。それが敵による甘言でない保証がない以前の問題ですが、地球上からオリジナル第一世代機をロストした場合、現状のたった一機しかないという現実は兎も角……その後、破棄後、Hoopの九州にあった際、我々地球人類は対抗する術を一つ欠きますね。そして他の二つ目があるわけでもない」  三月の冷ややかな声音に、他の軍人達も大きく頷く。 「でも、破棄すれば、もう戦いは起きないと、機体は話していた」  昼斗が続けると、三月が顎に手を添えた。 「それが事実だとしても、確証は何もないので。我々は、防衛手段をむざむざと捨てるわけにはいかないのです。それは、お分かりですね?」  昼斗は何も答えられなかった。  実際、第二世代機と第三世代機のみでは、Hoopに対抗できないというのは、明らかである。Hoopの飛来に備えるという観点で見た際、昼斗の駆動機をロストする事はデメリットばかりが目に付く。  こうして議論が始まった。  高官達の話し合いを耳にしながら、昼斗は目を閉じる。  ――平和。誰もが傷つかない平和。それを求めることが、許されない世情。それがどうしようもなく苦しかった。  この日、重ねられた議論において、結論として提唱されたのは、以下である。 『エノシガイオス第一世代機の破棄は、認められない』
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