―― 第八章 ――

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 退院し、マンションへと戻ってきた昼斗は、チェストを見た。写真立ての中では、光莉が笑っている。その背から、そっと昴が昼斗を抱きすくめた。 「なぁ、昴。そういうのは止めろ」 「俺に抱きしめられるのは嫌?」 「違う。俺はお前が好きだ。だから――辛いんだよ」 「俺も昼斗の事が好きだよ」 「同情しなくていい」  義弟は優しいからなと思い浮かべて、昼斗は苦笑しそうになった。すると昴が、昼斗の体を反転させて、正面から抱きしめた。 「昴、気を遣わなくていい」 「遣ってないよ」 「じゃあ、どうして俺を抱きしめるんだ? 俺の気持ちを知っていて、今の状況だから――」 「抱きしめたいことに理由はいるの? 理由を述べるなら、それはそれで簡単だけどね」 「昴?」 「言わないと分からないの?」 「何が?」 「馬鹿。馬鹿だよ、本当。俺がどれだけ愛してるか、気づいてない」  昼斗の体を抱きしめて、昴が吐き捨てるように述べた。だがその意味を、昼斗はすぐには理解出来なかった。だから回る昴の腕に両手の指で触れ、何度か瞬きをする。 「だから……気を遣う必要はないんだぞ……?」  必死で昼斗がそう告げると、昼斗の両肩に手を置き、昴が、触れるだけのキスをした。  その感触に、昼斗が目を見開く。 「違う、本当に好きなんだ。もう信じてもらえないかもしれないけど」 「!」 「酷い事をいっぱいしたと、自覚してるよ。でも――昼斗が大切なんだよ」  そう言うと、昴の腕に力がこもった。 「愛してる。ああ、馬鹿みたいだな。こんな風に伝えるつもりなんてなかったのに」
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