―― 序章 ――

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 昼斗は、そう言う事が聞きたいのではなかった。もっと具体的に、『シートベルトを締めるように』といった指示が欲しかった。だが期待できそうにもないので、周囲をチラチラと見渡す。見事に何もない。 《ラムダ・ホロスにリンクしているから、念じれば出てくるが》  すると声がした。通信相手の声は女性だったが、今響いてきたのは、男性らしき声音だ。 「念じる? それってつまり、どういう事だ?」  昼斗が口早に問う。 ≪頭の中に思い浮かべる。想像すればいい。それが、存在する光景を≫  それを聞いて、昼斗は半信半疑で目を閉じながら、座席にシートベルトがついている様を創造した。結果、ガチャリと音がして、胴回りがきつく締まった。 「っ、へ? どういう仕組みだ?」  しかし今度は誰の声も返ってはこず、その頃には、人型ロボットは上空まで舞い上がっていた。モニターを見れば、アスファルトの上を我が物顔で歩く巨大な蟻達が見える。  それらはどんどん遠ざかっていき、いつしか街が、山が、小さく変わっていった。
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