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疑問混じりに僕の名前を呼んできた男は、小学生の時に一緒に遊んだことがあると言った。
その男は佐藤と名乗り、僕は記憶を手繰る。それから、しばらく考えた末にようやく「久しぶり」という言葉を返した。
二十年以上前とはいえ、その男の面影は昔のままだった。二歳年上で、小学校に上がってすぐぐらいまで、一緒に遊んだ記憶がある。
僕のことを覚えていたことを驚きながらも、彼がスーツに身を包んでいることが感慨深い気もしていた。
「元気にしてたか?」
彼が定番中の定番の言葉を投げ、僕はそれに対して「うん、まぁね」と返した。
それから少し気まずそうに、互いに目を逸らす。そんな僕たちの気恥ずかしいような複雑な再会を尻目に、まるで軍隊の行進のように皆が一様に駅を目指していた。
「……良かったら、少し話さないか?」
そう言って、彼が指を差す。その先には居酒屋チェーン店の看板があった。僕は一瞬迷ったものの「いいよ」と、了承を口にした。
ホッとしたような顔をし、彼が先立って店に足を向ける。その後を追うようにして、僕は続いた。
席に着くと、僕たちはビールを注文した。手に掻いていた汗をおしぼりで拭っているうちに、僕たちの前にジョッキが置かれる。
乾杯をして、二人で口をつけると、やっと一心地着いたように空気が緩んだ。
「今、何をしているんだ?」
彼が先に口を開く。同じような質問をしようとしていた僕は、「不動産屋で働いてるよ」と慌てて返した。
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