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 「ねえ憂希君。  昨夜アップしたいつもの制服の私と、コスプレしてアプリで加工した私……  どっちかにいいねを送るとしたら?」  次の日、最笑ちゃんに聞かれたんだ。  速攻で答えた俺に、最笑ちゃんは過去最高の笑顔を見せてくれた。    全てのものには意思が、感情があると俺は思ってた。  それなのに、一番大切な人の意思に、感情に気付いていなかった、らしい。    「憂希君、ちょっと帰りに買い物行こうよ」  「いいよ、今夜は誰になるの?」  そして、俺に浴びせられる羨望の眼差しは数倍の威力になった。  SNSにアップされる画像はこれからも進化を続けるだろう。  画像の中の自分も本物の自分なのだから、かわいく、かっこよくしたいのは当然さ。    でも「2.5次元」という言葉を聞く度に、「奥行き」を欲しいと言われて、渡してしまった人もいるのかもしれないと思う。  画像の中の自分になりたい人は、俺が思うより多いのかも。  その逆も……  携帯電話の中の@さいわらは、変わらず元気に眩しいコスプレを見せてくれている。  そっちもきっと幸せなんだと信じてる。  「それにしても……  最笑ちゃんと俺じゃ、やっぱり何だか絵にならないなあ」  「なんで?私達は絵じゃないよ?」  漫画の中から飛び出して来た女の子は、今日も笑顔で俺の手を引っ張って歩き出した。  これからも俺は「いいね」を送るよ!  全ての世界の「君」に!              おしまい
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