二杯目 キューバリブレは一絞りの嘘で

61/64
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
「池杉は売れないシンガーソングライターです。そんな彼がライブを開催する際に必要な多額の資金を手配できたとは到底考えられません。必ず、誰かの支援があったはずなのです。ですが、資金だけの援助となると、かなり多額になってしまいます。そもそも、彼にそこまでの資金力を持った支援者がいたとは考えられません。何故なら彼はアルバイトをしていたからです。そうなると、彼に金銭的ではなく、もっと直接的なーーライブ開催自体を援助してくれるような協力者がいたと考えるのが自然ではないでしょうか。それが可能なのは、北野莉子を置いて他にいません」 「あ、そうか、そうだわ!」  深雪はポンと手鎚を打った。あの時、ライブハウス『ヴィーナス』の聞き込みで感じた違和感の正体はこれだったのだ。深雪は直感的に、どうやって一人のシンガーソングライターがライブの元をとっているのかに引っかかっていたのだった。 「じゃあ、犯人候補は三人ってわけね。あれ、でもどうやって絞り込むのよ」  またまた首を傾げる深雪。 「お客様ーー実に簡単な消去法ですよ?」
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!