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眉間に皺を寄せ、不機嫌さを露わにしながら言われるままに従う。飲み慣れたコーラにラムの甘い香りと刺激、何より後味として広がるライムの清涼感とわずかな苦味が心地よい。『クロウリー』のキューバリブレは、憎らしいまでに美味だった。
「で、これのどこが事件のようだっていうのよ」
深雪のもっともなツッコミ。このカクテルのどこに事件の要素があるというのか。
そんな彼女の言葉を微笑で華麗に避け、カラスマはもう一杯のカクテルを作り出す。
三度目、冷凍庫から姿を現すラム酒。それから二度目のコーラ。それらは再びタンブラーに適量注がれ、深雪の前に差し出された。ところが、
「ちょっと、これーーライムが入ってないわ」
こうして故なくカクテルが出されるのはまだいい。だが、中途半端な“作りかけ”を出すなんて、カラスマらしくない。
「いえ、このカクテルはこれで完成なのです。キューバリブレからライムを除けば、それはラムコークというカクテルになるのです」
「はあ……」
プロが言うのだからそうなのだろうが、屁理屈を並べられているようだった。深雪は一層不機嫌になって、カラスマを睨みつける。
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