22人が本棚に入れています
本棚に追加
「池杉光太郎でしょう。彼の証言である『犯人が金を要求した』が真っ赤な嘘なのです」
飄々として長い前髪を揺らし、カラスマは答えた。
「え……えぇえ!?」
深雪はあまりの驚きに、普段なら絶対あげないような奇声を発し、酔いもあってか力無くふにゃりとカウンターにうつ伏せてしまった。
「そんなの、絶対に有り得ないわ」
「それはどうでしょう。お客様が赤裸々に話してくださった防犯カメラの映像と、想像される当時の状況を考慮すれば、必然的に池杉の発言は嘘だとわかると思いますが」
「わかんにゃい! 説明して!」
「かしこまりました」
駄々っ子と化した酔っぱらいに、バーテンダーは慇懃にお辞儀をする。
「防犯カメラの映像を振り返ってみましょう。そこにはまず、不審な点が一つあります。何故、強盗は最初、池杉にだけ凶器を向けていたのでしょうか」
「それは店員を脅して、お金を手に入れるために決まってるじゃない」
最初のコメントを投稿しよう!