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謎であった。完璧な謎だったのだ。こんな道を通ったばかりにこの男と出会ったのだ。
「ああ面白くないな」
彼は元ツッパリの高校生だった。「彼は気が短かったが、気はやさしくて気は長くて気は長くて短かったのであった」なんだ、この人は彼と一緒にいるのは。だから彼はいやであった。「いやがられているのは、ツツガムシだろ?」
「ツツガムシって」
「そのとおりです」と声はとなりの高級住宅から聞こえた。
「いや、これはいいつっこみいれてもらい、気分はいい」
「何だかわからないけどがんばるではないの?」
「気分はいいですね」
「電話で話していたら近所で声は聞こえて、ここから離れていたな、問題ないな」
「大丈夫かな」
「帰って行くね」バイクの音は聞こえた。
「あの男そばにいる時は緊張していたけど離れるといい人だな」
「なんだろうな」
これじゃ見た目はいいのに中身はないとんかつですよ。と彼は音がするほうを見てみた。
心の中でつぶやいた。あんまりつぶやいてばかりだと変だから声を出した。
「つっぱりって案外優しい人もいるんだね」
「あいつ、いつからつっぱりになっていたのだ?」
彼はばかだなと思いながら右の脚をゆっくり伸ばした。そうか。
「つっぱりでないのか」
「当たり前だよ」
「でも不良だな」
「悪だな」
「僕よりまじめかと思っていた」
「それが悪だった」
彼はバイクから下りた。「まじめすぎるのだそうだ」
「まじめすぎる」
「なんじゃ」もう一人も元ツッパリの高校生ではなかったが、彼は不良に何と答えればいいのかわかりにくかった。返事をしににくかった。
「君はどう思う?」
「その手の話は僕は苦手です」彼は答えたのだ。
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