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「びっくりしたよ。レッスン中にいきなり姉ちゃんが倒れたって昂生くんから連絡あって。姉ちゃん死んだらどうしようって、今さっき食った賄いのラーメン全部吐きそうになった」
姉ちゃんが倒れた。
その言葉で、これは先ほどまで見ていた夢の続きだと悟った若葉。こんなことを聞いてみる。
「わたしの名前って、渚?」
金髪のセンター分け男は、若葉のことをそう呼んでいた。どうして夢の中のわたしは自分の名前をわざわざ『莉乃』や『渚』に変えるのだろうと不思議に思った彼女。どうせ自分の夢だし、どうせ自分が主役だし、そのまま『若葉』で通せばいいのに、と。
若葉の問いにきょとんと目を丸くさせた彼は、大きく首を傾げていた。
「はあ?姉ちゃんは莉乃でしょ。水瀬莉乃。やっぱ相当派手に頭打ったんだね。頭ん中ごちゃごちゃじゃんっ」
めちゃんこ心配そうな目を向けられてしまえば、彼が嘘をついていないと容易くわかる。
「え、どゆこと」
「は?どゆことってどゆこと」
「わたしの名前が『莉乃』だとしたら、それってあれじゃん、裸の夢の続きじゃん」
「はあ?」
あの日から眠ったまま、とは考えにくかった。何故ならその翌日(今日)の朝、母と口論した記憶もあるし、神社で願った記憶もあるし。
ならばやはり、公共の場である夕方の境内で眠りこけたのか。それじゃあつまり、だとしたら。
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