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若葉は日本女性同年代の標準体重を大幅に超えた、いわゆる肥満体型。それなのに今見えている光景は、二本の腕は、まるでモデルのようにすらりと伸びていて、標準どころかそれ以下の、シンデレラ体重の持ち主のものにしか思えなかった。
莉乃、大好きだよ。
昨夜見た、ぶっ飛んだシチュエーションの夢が脳で再生された。生まれたままの姿でイケメンに抱きしめられた、あの夢が。その時触った莉乃という人物の身体も、まるでモデルのように華奢だった。
「姉ちゃん……?」
抵抗をやめた若葉の手首から、男の力が抜ける。自由になった手で改めて彼女が触ったのは、頬、鼻、口、そして身体全体。
「これ、夢じゃないの……?」
若葉は心底驚いた。きめ細やかな肌に通った鼻筋、ぷるんとした唇、ぺたんこな腹、二の腕は細い。その全てがリアルな触感で、これが妄想だと夢だと貫くには無理があった。
「え、どこ行くの」
突然ベッドから立ち上がった若葉には、不安げな声が投げられる。
「ちょっとトイレっ」
「ええ、歩けるの!?トイレまで俺付き添おうか?」
「大丈夫!」
持ち上げた身体、すごく軽い。足早に歩いても、息は切れない。
どうしよう、どうしよう、わたし本当に、本当にまさか──
逸る気持ちを抑えながら、到着した女子トイレ。ドキドキ騒ぐ胸に手をあてて、勇気を出して鏡を見る。
「うっそ」
するとそこには女性が映った。己が知っているデブちん田村若葉とは遼遠かけ離れた、ゆるふわロングヘアの美人な女性が。
「ひょ、ひょ……」
あり得ない、だけどこれは、夢じゃない。
「ヒョエーー!!!」
わたしを変えてくださいっ。
これは若葉が神に願ったこと。そして現実に起こった真なのだ。
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