#003 夢じゃなかった

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 若葉は日本女性同年代の標準体重を大幅に超えた、いわゆる肥満体型。それなのに今見えている光景は、二本の腕は、まるでモデルのようにすらりと伸びていて、標準どころかそれ以下の、シンデレラ体重の持ち主のものにしか思えなかった。  莉乃、大好きだよ。  昨夜見た、ぶっ飛んだシチュエーションの夢が脳で再生された。生まれたままの姿でイケメンに抱きしめられた、あの夢が。その時触った莉乃という人物の身体も、まるでモデルのように華奢だった。 「姉ちゃん……?」  抵抗をやめた若葉の手首から、男の力が抜ける。自由になった手で改めて彼女が触ったのは、頬、鼻、口、そして身体全体。 「これ、夢じゃないの……?」  若葉は心底驚いた。きめ細やかな肌に通った鼻筋、ぷるんとした唇、ぺたんこな腹、二の腕は細い。その全てがリアルな触感で、これが妄想だと夢だと貫くには無理があった。 「え、どこ行くの」  突然ベッドから立ち上がった若葉には、不安げな声が投げられる。 「ちょっとトイレっ」 「ええ、歩けるの!?トイレまで俺付き添おうか?」 「大丈夫!」  持ち上げた身体、すごく軽い。足早に歩いても、息は切れない。  どうしよう、どうしよう、わたし本当に、本当にまさか──  逸る気持ちを抑えながら、到着した女子トイレ。ドキドキ騒ぐ胸に手をあてて、勇気を出して鏡を見る。 「うっそ」  するとそこには女性が映った。己が知っているデブちん田村若葉とは遼遠かけ離れた、ゆるふわロングヘアの美人な女性が。 「ひょ、ひょ……」  あり得ない、だけどこれは、夢じゃない。 「ヒョエーー!!!」  わたしを変えてくださいっ。  これは若葉が神に願ったこと。そして現実に起こった(まこと)なのだ。
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