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#004 これ、誰
わたしを変えてくださいっ。
いや、確かにそう願ったのはわたしだよ。だけどなにこれ、誰かに乗り移っちゃたの?それとも入れ替わっちゃったの?
あー、変えるって言っても、もちろん良い方にお願いしますね神様。これよりもっと醜くなっちゃったら、笑えないんで。綺麗で可愛い方に。
そんなことを付け加えたのも、間違いなくわたしだよ。だけど、この超絶美人の美ボディーは一体全体どこの誰のもの?
「だーかーらー、姉ちゃんは水瀬莉乃だって言ってんじゃんかっ。二十一歳のA型で、特技は弟の俺を抱き枕代わりにすることっ。ちなみに俺の名前は水瀬琥太郎ね。芸人のトップを目指す、二十歳のピチピチボーイ」
ふらふらと、トイレから病室に戻ってきた若葉が自身の顔を指さし「これ誰」と言うと、呆れ顔の琥太郎がそんな返答を寄越してきた。
指をさしたまま、聞く。
「水瀬莉乃って、架空の人物?」
「はあ?そこに実在してるじゃん」
「そ、そっか。なにやってるのかな、水瀬莉乃って」
「タレント目指してる」
「タレント?」
「バイトしながらタレント養成所に通ってんじゃんか」
「そ、そっか。えーっとじゃあ、金髪のセンター分けさんにさっき呼ばれた『渚』って名前は、なにかの演技の練習中だった、とか?」
「そんなん知らないよ、姉ちゃんが養成所で今日なにしてきたかなんて」
「そ、そっか」
うーんと考え込んでいれば、「まじでやべえ」と言った琥太郎が、若葉をベッドへ押し倒す。
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